今回は『やがて君になる 佐伯沙弥香について2』の感想です。

この作品を読む前に最低でも前作『やがて君になる 佐伯沙弥香について』と原作7巻までは読んでおいた方がいいです。
『やがて君になる』7巻の感想【ネタバレ注意】
『やがて君になる 佐伯沙弥香について』の感想【ネタバレ注意】



『やがて君になる 佐伯沙弥香について2』のあらすじ

『やがて君になる』外伝ノベライズ。 高校生となった沙弥香の恋は――。

 もう人を好きになるなんてやめてしまおう。中学時代に経験した手痛い失恋から、そう心に決めていた沙弥香。しかし高校の入学式で初めて七海燈子の姿を見たその瞬間から、どうしようもなく燈子に惹かれていく。
 同じクラスになり、一緒に生徒会にも所属し、やがて親友と呼べる仲にもなった。隣を歩み続ける中で、燈子の強さも弱さも知った。燈子のすべてを見て、一層好きになっていく。
 でも、だからこそ。沙弥香はどうしても「好き」を伝えられない。待ちすぎて、恐れすぎて、一歩踏み出すことができなかった沙弥香の迷い、後悔、喪失――。

 人を好きになるということを知ったのは、『彼女』と出会ってからだった。


【小説】やがて君になる 佐伯沙弥香について(2)
BOOK☆WALKER商品ページより引用

果たしてこの『彼女』とは誰を指すのかが議論になりました。表紙の沙弥香と燈子の妙な距離感も話題になりましたね。あと沙弥香の手。

今作は沙弥香と燈子が1年生のときの話が中心になると思いきや、試し読みでもわかるように侑が入学した後の話もあります。

※原作7巻だけでなく原作最新話(40話)の内容にも触れています。ネタバレ注意

『やがて君になる 佐伯沙弥香について』の感想

今作は大きく分けて3部構成です。

恋と、小糸

沙弥香と燈子が2年生のときの話。

沙弥香の頭の中がいかに燈子への想いで占められているかがよくわかります。

侑とも仲良さそうでよかったです。着飾る必要の無い関係っていいよねという。後半の部分は時系列がイマイチわかりませんが。

ちなみに自分含む一部ファンに大人気の「いいわよ堂島くん」のシーンもあります。謎すぎる診断があってほんと草。
いいわよ堂島くん診断

あの裏で沙弥香が考えていたことがわかるのはファン垂涎もの。

「いいわよ堂島くん」は12話ですがこの話は『佐伯沙弥香について』において重要な話だったりします。前作も今作も。

せっかくなので読み返しておくといいでしょう。

平行線

ここが本編。沙弥香と燈子が1年生のときの話がほとんどを占めます。

沙弥香が「平行線」として燈子の隣を歩んでいくことにした経緯が書かれました。

最後は高校3年生になった沙弥香と燈子のシーン。燈子1組、沙弥香3組とクラスも離れてしまいます。

それにしても挿絵のアホ毛の存在感が凄い(笑)。40話で結ばれた二人ですがとりあえずここまでは続いているようです。

全体的な感想としては、最初は完璧な燈子が好きだったのに徐々に考えが変わっていく沙弥香の心情が丁寧に描かれている印象を受けました。

人は完全に誰かに成り替わることが出来ないということを沙弥香は知っているのに、拒否されることを恐れて踏み込めないというのはまあそうだよなーとしか言えません。

ただ、それが「間違い」とまで言えるかどうかは微妙なラインだと思います。

燈子は沙弥香の踏み込んでこない優しさを評価していたので、沙弥香が踏み込んでしまったらもっと悪いことになっていた可能性もあります。

当時の余裕の無い燈子では例の「死んでも言われたくない」が発動するだけでしょう。侑にすら発動したわけだし。

そういう意味では仕方ない選択だったかと思います。いつかチャンスが来たときに動けるのもあります。

待てたからこそ燈子が変わったタイミングで告白出来たとも言えます。平行線のままよりは良かったかと。

ちょっと気になったのは「たくさんの意見と言葉が球体を作り上げて心を包む」という一文(P.180)。

というのも(球体のような)非ユークリッド幾何学の分野では「平行線は交わることもある」から。緯線は赤道に直角なのに北極点と南極点で交わりますよね。

つまり、平行線だからといって必ずしも交わらないとは限らないってことです。

ちなみに沙弥香の「燈子に好きだと言えるのかしら」があった14話のサブタイトルが「交点」。この話は侑と沙弥香が仲良くなる話でしたが意味はそれだけじゃなかったのかなと。

その他気になるトピック

まなみどについて

50音順の席順なら対角線でもおかしくないレベルの「五十嵐」と「吉田」が1週間でここまで仲良くなるのは異例。部活が同じというわけでもないですし。

そもそも近寄りがたそうな沙弥香と燈子のグループに入れている時点で天性の人との距離の詰め方の技術を持っているのではと思ってしまいます。

こういうのは性格に起因するものだからどうにもならない点かと。

もちろん大垣と芹澤も似たようなものだと思います。

なかなか距離を縮められない沙弥香と燈子との対比ということでしょう。

それにしても1か月くらいは経ってるのに同じクラスの男を把握してない沙弥香はブレないな……

ジャンケンについて

燈子の姉である澪が死んだ原因が事故なのはご存知の通りです。

しかし、元をたどれば負けた方がおつかいに行くジャンケンで燈子が勝ち、澪が負けたことで事故に遭って帰らぬ人となってしまいました(原作4巻)。

このときに燈子が出した手がチョキで澪が出した手がパー

パーを出さないといけなかった」というのは、姉になるためには姉が出した手を出すべきだったということです。

こんな些細なことですら姉になろうとする燈子の闇の深さが伺えます。ジャンケン自体がトラウマなのかもしれませんが。

文芸部員について

なぜか沙弥香を一方的に知っていた燈子の小学生時代の同級生である文芸部員。

『やがて君になる』という作品は無駄がほとんど無いので尺を取った以上は何かしらの意味がある傾向があります。

『佐伯沙弥香について3』で使えそうな人物かなーと。

空の彼方みたいに

まさかの大学編が始まりました。いつの間にか沙弥香は大学2年生に。

燈子より侑のが会いやすいのはなんとなくわかる気がします。本屋だし。大学は違うっぽい?

そして新しい出会いがありました。

出会い方は完全にみやりこと一緒。泣いている女の子に気が付くという。

沙弥香にとって都は師匠みたいな存在なのでリスペクト的な感じでしょうか。

でも大学ってそんなに泣くところか(笑)?

まさかの原作追い越しで驚きました。

あと沙弥香が大学でぼっちじゃなくてよかったです。

まとめ

やっぱり沙弥香が持っているカードではベストな選択をしたとしても燈子を攻略することが出来たとは思えません。

それはただ「燈子」と呼びたいだけなのに告白みたいな舞台を用意してしまう彼女の生真面目な性格に起因するのかなと。

致命的なまでに歯車が噛み合ってなかったのでどうしようもなかったと思います。

それでも高校時代に満足はしているようなので良かったのでしょう。

全体的に見ると前作『やがて君になる 佐伯沙弥香について』に比べて入間人間先生の色を出しやすくなったのかなという印象です。自由度が上がっているというか。

前作に関しては出来ることがそんな多くは無かったと思うので。

あとは次巻への導入のような形で終わらせたのはファインプレーだと思います。中学高校と辛い恋愛を経験した沙弥香に光が見えた気がします。

そして『やがて君になる 佐伯沙弥香について3』の制作も発表されました。

『2』が売れるかどうかすらわからないのに『3』の発売を発表できるくらい信頼できる作品になったってことですね。

ご存知の通り、『やがて君になる』の原作は次の8巻が最終巻です。

『やがて君になる』本編終了後の展開やアニメ2期、もちろん『やがて君になる 佐伯沙弥香について3』にも期待です。


【小説】やがて君になる 佐伯沙弥香について(2)