今回は『やがて君になる』で有名な仲谷鳰先生の初短編集、『仲谷鳰短編集 さよならオルタ』の感想を書いていきます。

『仲谷鳰短編集 さよならオルタ』の感想

さよならオルタ

一緒に育った双子のルリとハリ。彼女たちの幼馴染・草太に片方が告白されるが、不慮の事故で片方が死んでしまい……という話。

個人的な好みだけを言ってしまえば好きなタイプの話ではない。とはいえ好みだけで切り捨ててしまう気にはならない話でもある。

そもそも「ルリ」と「ハリ」は概念のようなもので個人としてのアイデンティティは無いように思える。ぶっちゃけ草太も区別はできてなかったと思うしどっちでもよかったはず。たまたまあの時舞台に立っていた方に告白しただけ。そして彼女を「ルリ」で固定しようとしたわけだろう。

「どっちがいい」とか区別できる要素がないのでそうなるのでは。各所で考察されてるような深い意味は実はないのかも。ルリとハリもどっちがどっちになるかはコインで決めてるしその程度のノリでもいいはず。

ちなみに本作の英訳は「FAREWELL TO MY ALTER」。「alter」は「変わる・改める」といった意味で「change」とほぼ同義。「オルタ」は彼女たちの名字の「折田」だがあえてこの語をもってくるあたりが凄い。

画力や話の構成も新人とは思えないレベルであり才能の片鱗を感じさせる。

勇者は三回世界を救う

勇者が魔王を倒したものの、宝珠を壊せなかったせいで魔物は消えなかった。しかしそれは……という話。

皮肉が効いてて面白いとは思ったが、何が「三回」なのかはよくわからなかった。王女の言うように2回に思えるが。自分が戦いたいがために魔物を残したことが3回目?でもそれだと「世界」は救ってないよな……

ファンタジー系の作風でも絵が上手いのはさすが。



なみだ風味エスカルゴ

感情を食べる寄生虫に取りつかれたが……という話。

それにしても設定がとんでもねーな……あんなの食べたいと思わないが(笑)

これは百合といえば百合かもしれない。

幸せは傷のかたち

ここからはエクレアシリーズの再録。これはピアノ好きなぼっちと仲良くなりたい少女が不穏な願いをしてしまうが……という話。

こんな話を短い尺でまとめるのはさすがとしか。

いつだって横顔

アイドルを推す子の横顔はかわいいという話。

すっごいかわいい。至言。

こみみけーしょん

キツネ耳の子と仲良くなりたいという話。

一部で人気のケモ耳属性なので好きな人は多そう。

わたしカスタムメイド

自分好みのアバターを作ろう(提案)という話。

やっぱりこの時期Vtuberにハマってたのか……百合漫画家Vtuberにハマる人多い印象がある。

ダブルベッド

本作には珍しく普通に甘々な話。やはりやが君最終巻と同時発売だった影響も多少はあったようだ。

まあこっちでも書いたので……

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優しくなりたい

飛び降り自殺した子と同じクラスだった少女。屋上で彼女と少年が出会い……という話。

少年と少女、どっちの気持ちも人間にはあると思う。深い話だ。



まとめ

トップとラストの話で「死」を扱っており、他もややダーク目な話が多い短編集となっています。

とはいえ暗いだけでなく、考えさせる話が多いのはさすがといったところ。

『やがて君になる』もそうでしたが一筋縄ではいかない話が多くて面白かったです。

次回作にも期待したいですね。